法曹養成制度-現場の視点での見直しを期待-

強い台風が日本を通過し、交通機関にも大きな影響が出ましたが、皆様、大丈夫でしたでしょうか。 厳しい残暑も終わり、すっかり秋の気配が感じられるようになりました。 司法試験を受験してきた私にとっては、秋と言えば、司法試験の合格発表の時期。自分の合格後も、勉強の相談などに乗っていた後輩たちの合否が気になります。  政府は8月に、法曹養成制度関係閣僚会議を設置し、司法を担う裁判官、検察官、弁護士(法曹)養成制度の本格的な見直しの議論を始めました。  法科大学院卒業後に司法試験を受験する現在の制度は、2004年にスタート。 司法制度をより国民が利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとするため、質量ともに豊かな法曹を育成しようと、法科大学院制度が開始されました。  しかし、開始から8年、問題点が指摘されています。 一つは司法試験合格率の低迷。 当初は合格率を70〜80%にする計画だったはずが、第1回の合格率は約40%、その後も減少し、今年の合格率は約20%に留まっています。  もう一つは、増加した合格者の就職難の問題です。 合格率は低迷しているものの、毎年の司法試験合格者の人数は現在約2000人、法科大学院開始以前の約1000人に比べると大幅に増えました。 その大部分が弁護士となりますが、せっかく合格しても、希望する就職先が見つからず、弁護士として活動できないといったケースも出ています。 こうした現状から、司法試験はリスクが高いとの認識が広まり、法曹に優秀な人材が集まらないことが懸念されています。  合格者の就職難の問題では、弁護士を社会の多くの分野でもっと活用していくことが重要です。 その一つとして期待されているのが、自治体の法務分野での弁護士の採用です。 神奈川県では、東京都に次いで2番目の早さで、弁護士を任期付き職員として採用しました。 先日訪問し、町議会議員と懇談させて頂いた湯河原町では、今年6月、県内で初めて非常勤の職員として弁護士を採用しています。  弁護士というと「裁判」のイメージかもしれませんが、必ずしもそうではなく、たとえば後で法律的な問題がおこらないよう事前に契約書をチェックするなど、紛争を予防するということも、大切な弁護士の仕事です。  しかし、多くの自治体や企業では、まだ弁護士をどのように活用したらよいのか、わからないのが現状ではないでしょうか。 「弁護士は費用が高い」というイメージも二の足を踏む原因の一つだと思います。  こうした問題点を検討するために設置された法曹養成制度関係閣僚会議ですが、就職難の問題について言えば、自治体や企業に、単に上から一方的に採用を呼びかけるような形ではなく、受け入れる現場の要請にあった見直しを行っていくべきです。  新鮮な決意みなぎる新合格者の姿に触れると、自分が司法試験に合格した当時の初心を思い出します。 社会の役に立ちたいと、高い志をもって努力してきた青年たちが希望をもって社会に貢献していけるよう、しっかりと協議がなされることを期待したいと思います。